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本のない書斎/中身のない研究

「明日は天気になれ」 坂口 安吾

エッセイ集。 獅子文六と交流があったことが書かれている。わたしは安吾のカタカナ使いに獅子文六を思い出していたので、また獅子文六はもっと後の時代だと勝手に思っていたのでこれには少し驚いた。 短いエッセイが100話あるので少しづつ楽しんだ。 明日は…

「木枯の酒倉から」 坂口 安吾

安吾の処女作。であるのだが、これまでに読んだ作品の中ではもっとも難解であった。もっとも、分かりやすさというのはその作品の良し悪しを決める決定打にはならないし、わたしの理解が不足しているという点は否めない。 主人公が狂人のような不思議な男と出…

「文づかひ/文づかい」 森 鷗外

「文づかひ」とは、文、つまり手紙を届ける「遣い」のことであった。主人公が姫から預かった手紙を届けるという筋書きは分かったものの、細部を理解するのがなかなか難しい。姫は親の決めた結婚が嫌で、その手紙によってそれを免れた、ということになると思…

「D・D・Tと万年床」 坂口 安吾

安吾の「明日は天気になれ」を読んでいて、D・D・Tの話が出ていたのでこちらも読んだ。D・D・Tというのは薬品の名前だが、おそらくは強力な殺虫剤であろう。 わたしは安吾の部屋の写真がとても好きだが、このエッセイを読むととてもここには住めないな、と思…

「黒蜥蜴」 江戸川 乱歩

明智小五郎シリーズ。「黒蜥蜴」という女の賊が登場するが、テイストとしては二十面相のシリーズに近い。殺人事件の推理をするのではなく、怪盗と騙し合いをするのである。子供向け作品ではないと思うのだが、相変わらず変装やら身代わりの人形やらのトリッ…

「駈込み訴え」 太宰 治

再読。最初に読んだのはおそらく「人間失格」の文庫本に収録されていたもの。最後に語り手がユダと名乗るのが印象的であった。なんとなく分かっていても、鮮やかだと思う。 読み返してみて、こんなに疾走感のある作品だったかと驚いた。はじめて読んだときと…

「めくら草紙」 太宰 治

なんにも書くな。なんにも読むな。なんにも思うな。ただ、生きて在れ! ようやく「晩年」の作品をすべて読んだ。少しづつ読んだのでかなり時間がかかった。どうも読むのが疲れるのだ。 ひとつわかったことがある。作家の作品はまず代表作をいくつか読むのが…

「陰火」 太宰 治

おれはいまに大作家になるのであるから、この小説もこののち百年は世の中にのこるのだ。するとお前は、この小説とともに百年のちまで嘘つきとして世にうたはれるであらう、と妻をおどかした。 「誕生」「紙の鶴」「水車」「尼」の4遍から成るが、「尼」は間…

「四月馬鹿」 織田 作之助

武田さんのことを書く。 ――というこの書出しは、実は武田さんの真似である。 武田麟太郎氏を偲ぶエッセイ。 四月一日の朝刊を見ると、「武田麟太郎氏急逝す」という記事が出ていた。 私はどきんとした。狐につままれた気持だった。真っ暗になった気持の中で…

「夜行巡査」 泉 鏡花

再読。鴎外の「高瀬舟」を読んで思い出したので読んだ。泉鏡花はわたしには難しいのだが、この作品は比較的わかりやすい。 どのような状況においても冷徹に職務を全うする巡査。道徳よりも私情よりも職務上の規則を行動の指針とする。とにかく融通がきかない…

「高瀬舟/高瀬舟縁起」 森 鷗外

訴えるものに泉鏡花の「夜行巡査」を思い出した。 罪人を島へ送る高瀬舟。あるとき乗せた弟殺しの喜助は、他の罪人とは様子が違っていた。晴れやかな表情を浮かべる喜助に同心が話を聞く。 喜助のポジティブさに驚かされた。わたしなどは、罪人となった時点…

「貝の穴に河童の居る事」 泉 鏡花

河童が人間に復讐する話なのだが、「復讐」という深刻さはあまりなく、ユーモラスな作品である。人外のものがいろいろ登場する。 「口へ出して言わぬばかり、人間も、赤沼の三郎もかわりはないでしゅ。翁様――処ででしゅ、この吸盤(すいつき)用意の水掻(み…

「私の小説」 坂口 安吾

「私の小説」ということについて書いてくれ、と言われたそうだ。 「作品がすべて」ということを安吾はたびたび書いている。 作家にとつて小説は全てであり、全てを語りつくしてをり、それに補足して弁明すべき何物も有る筈はない。有り得ない。文学は全ての…

「玩具/『玩具』あとがき」 太宰 治

私は夜、いつも全く眼をさましている。昼間、みんなの見ている前で、少し眠る。 私は誰にも知られずに狂い、やがて誰にも知られずに直っていた。 幼い頃の記憶。あるいは嘘。この感覚、少しわかる気がする。 これは未完の作品らしい。あとがきは「玩具」「魚…

「雪国」 川端 康成

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。 ノーベル文学賞受賞、そのタイトルと冒頭はあまりに有名だが、恥ずかしながら初読である。長編小説と思い込んでいたのだが、案外短い。 読んでいて辛い。「雪国」…

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