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本のない書斎の書評ブログ

仕掛けもグロさも一級品【殺戮にいたる病】ネタバレ感想

 

叙述トリックはもちろん、グロ描写でも名高い作品。

いきなり犯人の蒲生稔が逮捕されるシーンから始まる。わたしはスマートフォンで読んでいたため、操作ミスでエピローグに飛んでしまったのだろうかと一瞬疑ったが、そうではなかった。この作品は「エピローグ」から始まるのである。

わたしはこの作品を2回読んだ。1回では理解しきれない部分があった。2回読むと鮮やかに分かる。この作者は相当上手い。いや、1回ですべてわからせる方が上手いのか? まあこの辺は結局読む人にもよるか。叙述トリック作品の中には、作中で「実はこういうことでした」なんて丁寧に解説してくれるものがあるが、そういう手法はあまり好みではない。「イニシエーション・ラブ」のヒット以降「2度読みたくなる」という謳い文句が目立つように思うが、実際に2度読んだのは初めてだ。話が似ているわけではないのだが、ヒッチコック映画のネクタイで美女の首を占める殺人鬼を思い出した。叙述トリックの名作だけあって、かなり読み応えのある一冊。

 

感想

「大学の授業」というのは大学生だと思わせるトリックで実は稔は大学教授かもしれない、ということには気付いたものの、それでも騙された。母との関係や態度でおかしいところはあったし、過保護なほどに溺愛されていながら「愛されていない」 というのも変に感じたが、「とっくに成人した息子をいつまでも過保護にかまう親」もしくは「実は年の離れた息子がもうひとりいる」程度の想像しかできなかった。物語は「稔」「雅子」「樋口」の3人の目線で語られるが、2回目読む際は樋口のパートは飛ばして稔と雅子のパートだけ読んだ。

実際には、疑われていた息子は無実で犯人は夫の稔なのだが、後半では「父の犯行に気がついた息子の行動」がますます母親の懐疑を決定づけることとなる。前半は雅子の勘違いというか思い込みなのだが、後半では本当にそういう行動をしている。うまいなあ。実際に息子がビデオみたり夜中に庭を掘り返したり六本木のホテルに行ったりしてるんだもんな。ああそういうことか、と。筆者の筆力には感嘆させられた。

稔が試験のために大学へ出かけたのが昼食を終えてからだったので、雅子は二時頃になって息子の部屋へ入った。

2回目を読んだとき、この部分には思わず声が出た。代名詞には要注意。最初にエピローグを持ってくるあたりから時間のトリックも疑ったが全然そんなことはなくて、トリックはシンプルに「蒲生稔」を「蒲生雅子の息子」だと思わせる一点のみ。

ところで、「何の罪もないのに殺された息子かわいそう」なんて思ったのだが、その感想もおかしいような。殺された女たちもかわいそうな筈なんだが。

永遠の愛をつかみたいと男は願った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に 抉る衝撃のホラー。

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