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本のない書斎の書評ブログ

エンターテイメント映画を見たような【マリオネットの罠】ネタバレ感想

 

久しぶりで懐かしささえ覚える赤川次郎。小学生の頃に幽霊シリーズや三毛猫ホームズシリーズなどを読んでいたが、内容はろくに覚えていない。というか、ちゃんと理解して読んでいたのかさえあやしいものである。赤川次郎といえば軽いタッチでコミカルなイメージだが、この作品は少し毛色が違うようだ。この作品が氏の最高傑作であるとするレビューもある。とはいえ読みやすさは健在なので、気軽に手にとっていただければと思う。

 

感想

さて、この作品は、「叙述トリックのおすすめ作品」として名前が上がっていたので読んだのですが、 あれ? これは叙述トリックなのか? たしかにラストにどんでん返しはあったけど。

作中作というわけでもなく修一の目線で描いてこのラスト、というのはいささか強引であるし書き手にとって都合が良すぎる。いや、面白かったんですよ、雅子の猟奇的な感じとか、最高でした。(実は操られて利用されていただけで最後は可哀想なんですが)

シリアスだという意見も多いですが、やっぱりコミカルだと思います。ボーイがうとうとしてて照明つけちゃうとことか。赤川次郎作品としてはコミカル成分少なめだと思いますが、ありえない設定の上流階級刑事だったり、ブローチの発信機だったり、リアリティというよりエンターテイメントですよね、やっぱり。

館ものかと思いきや、雅子が外に出るなり紀子と修一以外を皆殺しにしたのは衝撃でした。そのあと舞台は長野の山奥から東京に移り、雅子は次々に殺人を重ねます。殺される直前の「先生」たちの姿が丁寧に描かれているのが、雅子の犯行の冷徹さを際立たせていい。話が麻薬密売にまで及ぶと、舞台はなんとフランス・パリにまで広がります。こちらは国際的な組織犯罪とあって、舞台装置はかなり派手。

裕福な美人姉妹の館、幽閉されたもう一人の妹、連続殺人、麻薬の密売組織、人体実験、ヒロインによる潜入捜査、とにかく盛り沢山です。映画なら2時間半から3時間はかかるのでは? というかこれもう映画ですよ。ストーリーも映画向き。むしろ小説より映像の方が整合性とれる気がします。そのほうが修一の内面がわからないですから。

ラストはたしかに意外なんですけど、精神病院での大冒険が盛り上がりすぎて霞んでしまってる気がします。盛り上がりが多いんですよね。そのあとにも、新郎新婦と警察とナイフを持った殺人犯が交差する披露宴のシーンがありますし。

ラストのどんでん返しが霞むくらいに中盤が盛り上がるというのもある意味すごいです。わたしは初めから「どんでん返しがあるだろう」という先入観をもって読んでいたので、真相が明かされても、その部分はおまけのエピローグみたいに感じてしまいました。

とにかくエンターテイメントです。ありえないし、都合が良すぎるし、伏線を見破るためのヒントも相当少ないのですが(でもちゃんと書いてはあります。教職について四年、とか)、非常によくできた濃密なサスペンス。大活躍したヒロインの美奈子が実はカムフラージュに利用されていただけ、というのが報われないですが。

修一の「今度は僕がマリオネットになる番だ」という台詞が赤川次郎っぽい。

しかしこれが処女長篇とは、驚きました。

“私の事を、父は「ガラスの人形」だと呼んでいた。脆い、脆い、透き通ったガラスの人形だと。その通りかもしれない”…森の館に幽閉された美少女と、大都会の空白に起こる連続殺人事件の関係は?錯綜する人間の欲望と、息もつかせぬストーリー展開で、日本ミステリ史上に燦然と輝く赤川次郎の処女長篇。

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