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本のない書斎/中身のない研究

「少年連盟」 佐藤 紅緑

 

「ああ玉杯に花うけて」がとても良かったので佐藤紅緑の他の作品も読んでみようと思った。青空文庫にはもうひとつ、「少年連盟」という作品がある。約11万字、こちらも文庫本一冊程度のボリューム。

 

さて、「ああ玉杯に花うけて」の方は「今の時代にはそぐわない点も多いが、それでもなお胸を打つ素晴らしい作品」であったのだが、こちらの「少年連盟」の方は21世紀になっても色褪せないというか、むしろ今この時代だからこそ多くの人に読んでほしい作品であると思った。

 

「少年連盟」は国籍も人種もばらばらの、15名の少年から成る。

 

日本   大和富士男(一五) 同弟次郎(一〇)

アメリカ ドノバン(一五) グロース(一五)

イギリス ゴルドン(一六)

フランス ガーネット(一四) サービス(一四) バクスター(一四)

ドイツ  ウエップ(一四) イルコック(一五)

イタリア ドール(一〇) コスター(一〇)

シナ   善金(ゼンキン)(一一) 伊孫(イーソン)(一一)

インド  モコウ(一四)

     猟犬(りょうけん) フハン

 

嵐のため遭難した15名は、未知の土地で生活を始める。どうやらここは絶海の孤島らしい。住居を構え、狩りや採集をしてたくましく生きる姿、特に年長者たちの、年少の者を思う姿には尊敬の念を禁じ得ない。「ああ玉杯に花うけて」でもそうであったが、果たして15、6歳の少年だろうかと思うほど、紅緑の描く少年というのはできた人間なのである。

 

登場する悪漢というのが、子供らを皆殺しにしようという今どき珍しいような極悪人なのだが、もとをたどれば彼らはおそらく船長から奴隷のような扱いを受け、安い賃金でこき使われていたのであろう描写がある。彼らももとは迫害される側であった。少年たちはこの悪漢を退治、というか、殺してしまうのだが、命の危険があるとはいえこのあたりはさすがに古い作品である。現代の子供向け作品であれば、悪漢とはいえ子供の手で殺すようなことにはさすがにしないだろう。

 

「ああ玉杯に花うけて」はどちらかと言うと「愛国」の色が強いので、「少年連盟」の方が万人に勧められる作品のように感じた。

差別や偏見を超えた共同体としての少年連盟、無人島の冒険談としても面白く、後世に残したい作品である。

 

 

図書カード:少年連盟

 

追記

「少年連盟」は、ジュール・ヴェルヌの「十五少年漂流記」の登場人物の一部を日本人に置き換えた翻案、とのこと。

 

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