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本のない書斎/中身のない研究

「怪人二十面相」 江戸川 乱歩

 

こちらは大人向けの作品だと勝手に思っていたのだが、そういうわけでもなさそうだ。もちろん大人が読んでも良いが、文体も内容も小学校の中・高学年向けといった印象である。

 

シリーズものとして重要な点としては、この物語では、「少年探偵団」の結成が描かれている。組織の成立ちが明らかになると、これまで不思議に思っていた、明智探偵と少年探偵団のメンバーが小林少年に絶対の信頼を寄せている理由がわかった。もともと明智の助手は小林ひとりだったのだ。優秀な助手である小林は、明智の留守中は代理として事件にあたっている。そこで誘拐された少年を助けるのだが、この少年というのが羽柴である。羽柴は小林に憧れる。小林の活躍は新聞にも載っている。同じく小林に憧れる子供らを集め、羽柴は「少年探偵団」を結成、小林を団長に迎えるのである。このような経緯であるから、メンバーが小林に絶対の信頼を寄せているのは当然のことであった。そして、メンバーは小林とは違い、明智の直接の助手の関係にあるわけではないのだ。

 

少年探偵団の物語はいくつか読んできたが、ようやく明智探偵が活躍する作品を読めた。小林の場合はどうしても「少年の冒険」の感があるのだが、明智はやはり大人であり、二十面相と対峙して会話をする場面など緊迫した中にちょっとしたダンディズムを感じられる。とはいえストーリーは子供向けなのであまり期待しないで読むのが良い。

 

さて、ここを指摘するのは野暮なのでこれまで控えてきたが、どの物語でも二十面相は逮捕されて終わる。それなのに、別の物語になると、何事もなかったようにまた現れては犯行を行う。そして再び「ついに」逮捕されるのである。「名探偵コナン」では、宿敵の怪盗は捕まらない。ギリギリまで追い詰めたけれど最後は毎回逃げられる、とか、捕まえてもすぐに脱獄してしまう、とかいうのであれば、このようなつまらないことは気にしないで済むのだが。

 

 

図書カード:怪人二十面相

 

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