Empty Study

本のない書斎/中身のない研究

「恐ろしき錯誤」 江戸川 乱歩

 

シリアスな復讐劇なのだが、喜劇的な結末がかえって悲劇を強調するように感じた。北川の細君が殺された方法は実に安全な殺人法で、同じく乱歩の作品である「赤い部屋」を彷彿とさせる。とはいえ、細君が殺されたというのは北川にとっていちばん納得できる仮説に過ぎず、本当に殺人であったかどうかについては疑う余地があるのだが。

 

「赤い部屋」 江戸川 乱歩 - Empty Study

 

内容とは少し離れるが、”What ho! What ho! this fellow is dancing mad! He hath been bitten by the tarantula.” というのがどうにも気になって仕方がない。どうやら有名な一節らしいので調べてみる。

 

これはエドガー・アラン・ポーの「黄金虫」という作品に出てくるようだ。早速青空文庫で見てみると、問題の文はなんといちばん始めに出てきた。

 

おや、おや! こいつ気が狂ったみたいに踊っている。タラント蜘蛛ぐもまれたんだな。

 

注によると、イギリスの俳優で劇作家の Arthur Murphy(一七二七―一八〇五)の「All in the Wrong」という喜劇の中の一節らしい。要するに、扉によく書いてある、「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ――W.Shakespeare」みたいなものであり、ポーの作品からというより戯曲からの引用、ということになる。とはいえ江戸川乱歩は「江戸川乱歩」というくらいであるから、この喜劇からではなく、ポーの作品からこの一節を引用した、と考える方が自然であろう。「黄金虫」もそのうち読むつもりである。

 

 

図書カード:恐ろしき錯誤

 

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