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本のない書斎/中身のない研究

「堕落論」 坂口 安吾

 

再読。

一度目を読んだのは子供の頃ではなく、いい大人になってからのはずなのだが、内容を何ひとつ覚えていない。どちらかというとちょっと苦手、という印象を漠然と残すのみである。

 

一言一句理解できるかというと否である。それでも「生きることは、もっとわけの分らぬものだ」「生きよ堕ちよ」「私はハラキリを好まない」「人間は生き、人間は堕ちる」などキャッチーなフレーズが多い。第一「堕落論」というタイトルからしてキャッチーだ。

 

難しい内容ではあるが、いたずらに小難しいことを書こうとしている印象はない。むしろ易しく易しく説明しようとしているように思う。

 

これを読んでまったく何も印象に残っていないということには我ながら呆れた。よほど適当に読み飛ばしていたのだろう。

 

分かったこと。分からなかったこと。分かったような気がすること。

 

今度は多少心に残るものがあった、と思うが、きっとまたすぐに忘れてしまうのだろう。

 

読んでいるうちは分かったような気になっているのだが、ひとたび説明してみろと言われると言葉が出てこない。おそらく本当の理解はまだ先なのであろう。わからなくてもいい。何度でも読めばいい。

 

戦争は終った。特攻隊の勇士はすでに闇屋となり、未亡人はすでに新たな面影によって胸をふくらませているではないか。人間は変りはしない。ただ人間へ戻ってきたのだ。人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。

 

※追記(2017年3月14日)

少しわかった気がする。はじめて読んだときは、「こういうことが書いてあるだろう」という予想と違うので理解ができなかったのだろう。わたしが勝手なイメージを持っていたのが原因だ。素直に読んでみれば、何も難しいことはない。書いてある通りなのである。無頼派とか、反権威主義とか、そういうイメージで読むとすっと頭に入ってくる。

 

 

図書カード:堕落論

 

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