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本のない書斎/中身のない研究

「早すぎる埋葬」The Premature Burial エドガー・アラン・ポー

 

乱歩の「パノラマ島奇譚」でポーの「早過ぎた埋葬」の話題が出たので読んでみることにした。「死体が生き返った」的なミステリーかと想像していたのだが、ミステリーではなく奇譚の類だった。

 

人類史上「生きたまま埋葬される」ということはそう珍しくない頻度でしばしば起こっていたという。「私」は長時間「死」と見まがうような昏睡状態に陥るという発作をしばしば生じるため、生きたまま埋葬されるという可能性に恐怖している。

 

当時はこのようなことがしばしば起こり、「生きたまま埋葬される」という恐怖は何も「私」に特有のものではなく、誰もがある程度は持っていたものらしい。「パノラマ島奇譚」で話がでてくる「生埋め防止協会」というものも、どうやら本当にあったらしいのだ。さらに、万一生きたまま埋葬されたときのための様々の工夫が施された棺というのも、作品の中だけの代物ではなく、実際に作られていたようである。

 

なんだか笑い話のようだが、実際に自分の身に起こることを想像すると、たしかに他の苦痛と比較してももっとも恐ろしいものであると言えるかもしれない。

 

常に埋葬の恐怖にとり憑かれている「私」は、狭くて暗い船の棚寝床で目覚めたとき、自分は埋葬されたのだと思い込んでしまう。しかし苦痛と戦慄を味わったその日から、すっかり埋葬への恐怖は消えてしまい、それ以降発作も起こらなくなった。発作に怯えていたように思えたが、実際には、恐怖が発作を引き起こしていたのだろう、という結末である。

 

生きたままの埋葬に死体泥棒。火葬が主流の現代に比べて、土葬の時代には、今よりずっと「死」や「死体」が身近にあったのかもしれない。

 

 

 

図書カード:早すぎる埋葬

 

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