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本のない書斎/中身のない研究

「パノラマ島綺譚」 江戸川 乱歩

 

乱歩作品としては長編のカテゴリに入るだろう。構成としては大きく2つに分かれる。人見廣介が菰田源三郎に成りすまそうとする前半と、そうして手に入れた財力で作りあげた「パノラマ島」を描く後半である。

 

犯罪小説のような前半も面白いが、後半の濃密でむせ返るような世界観はさすがである。小説だからこそ描ける世界だ。

 

しかし楽園は永遠には続かなかった。北見小五郎という人物の出現により、真実が暴かれてしまう。人見が貧乏時代、自分の夢想を細部に至るまで描写した小説を書いていたというのが伏線だったのだ。北見はその小説『RAの話』を知っており、それがきっかけで死体の隠し場所まで読まれてしまう。

 

北見は人見との会話で証拠を引き出すのであるが、この手法はまさに明智小五郎のそれである。名前が同じ「小五郎」であり、実は明智小五郎だった、ということも予想したがそのような展開にはならなかった。この世界観に明智が登場するのは唐突すぎるから「北見小五郎」という別人を登場させたのかもしれない。

 

楽園の崩壊に人見の血の花火が降り注ぐラストは素晴らしい。

 

 

図書カード:パノラマ島綺譚

 

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