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本のない書斎/中身のない研究

「春琴抄」 谷崎 潤一郎

 

どのようにして褒めたら良いのかわからない。「素晴らしい」という言葉の中にほんのわずか含まれる上から目線、こういったものさえ許したくない。

 

何の知識もなく読み始め、冒頭の墓の場面では難しさから読むのをやめようかと思うくらいであったが、次第に引き込まれ、 読み終わるのが惜しいと思うまでになった。短い作品なのだが、読むのにじっくり1週間かけた。

 

「耽美」という言葉はあまりにベタだが非常に耽美的である。盲目の美女春琴への常軌を逸した献身、主従であり師弟であり事実上の夫婦である特殊な関係、こうして言葉にしてしまうと途端に魅力が失われてしまうような、きわめて微妙な、それでいて何よりも強固な2人の世界。佐助は春琴のため自ら両目を潰す。しかしそれは 春琴のためのみならず、自らのためでもあった。

 

盲目を描く作品というのは概して美しいものが多いが、その中でも「春琴抄」は突出しているように思う。

 

句読点がないのは古い作品だからであろうかと思ったが、どうやらこれもこの作品の特徴で、「実験的な文体」らしい。なるほど言われてみればたしかに改行や括弧もほとんど使われていなかった。読みやすいとは言い難いこの文体は、軽く読み流すことをゆるさず、じっくり読ませる効果があるように思う。それでいて淀み無く流れるような感じもあって、よりいっそう作品に引き込まれるようである。

 

 

図書カード:春琴抄

 

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