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本のない書斎/中身のない研究

「やまなし」 宮沢 賢治

 

再読。といっても以前に読んだのは小学校の教科書である。そのときは特に何の感想も抱かなかったように思う。その頃はわりとはっきりしたストーリーがあるものが好みで、こういった作品の良さがわからなかった。

 

織田作之助が言うように、やはり若い頃に読んだ作品というのは読み返すべきなのであろう。

 

二十二歳の時アンナカレーニナを読んでみたけれども、僕はそこからたのしみを得ただけで、人生かくの如しという感慨も、僕の人生が豊富になったという喜びも抱かなかった。恐らくこれは僕が若すぎたせいもあろうと思う。それ故、若い頃に読んだ古典はあとで必ず読みかえすべきであると思う。若い頃に読んだから、もう一度読みかえすのは御免だというのであれば、はじめから読んで置かない方がましであろう。

(織田作之助「僕の読書法」)

 

蟹の兄弟の他愛もない会話、世界への疑問、未知のものへの恐怖、お父さん蟹の知性や父性、光射す水底の美しさ、季節や時の流れ。若すぎる時分に意味がわからないと切り捨てたものの中に、こんなにも豊かな世界があった。

 

やまなしは5月に花を咲かせるという。魚がカワセミの餌食となって殺された頃にちょうど花をつけ、12月(やまなしが実をつけるのは10月であり、11月という原稿も見つかっていることから、ここは11月の誤植であるとする説もあるようだ)にその果実を川底へもたらす。非常に美しい作品であると思う。

 

 

図書カード:やまなし

 

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