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本のない書斎/中身のない研究

「落とし穴と振り子」The Pit and the Pendulum エドガー・アラン・ポー

 

宗教裁判で死刑宣告された男の話である。暗闇の中で目を覚まし、自分がどこにいるのか全くわからない状況から調査を開始し、部屋の大きさを推測する。どうやら埋葬されたわけではないらしい。地下牢と思われるその場所には、深い落とし穴があった。偶然にも転ぶことでそれを発見することができた彼は、落とし穴に落ちて死ぬ、ということは免れることができた。しかし次に目を覚ますと、彼は縛られており、上からは刃物のついた振り子がゆっくりと迫ってくる。食事の残りを革紐に塗りつけ、ネズミに食いちぎらせることで助かることができた。彼は監視されているようで、またすぐに次の危険が訪れる。今度は灼熱の壁が迫ってきて、彼を落とし穴に追い込もうとする。そのとき敵軍によって宗教裁判所が落ち、彼は将軍の手によって救われた。

 

とこういう話である。恐怖を題材にはしているが、怪奇現象や得体の知れないもの、自然の脅威などではなく、人為的な恐怖である。人間の悪意、あるいは恐怖から異端者を処刑せずにはいられない弱さ、手を下す側にいることの残忍さ。救ってくれるのも、精神的な気付きなどではなく、はっきりと他人の手が伸びてきて救済してくれる。

 

死が恐怖であることは誰しもそうであろうが、ゆっくりと振り子が迫ってくる恐怖は想像以上だろう。しかし考えてみれば、死は必ず訪れる。見えないだけで、時の振り子は全ての人の上にゆっくりと迫ってきている。

 

The Pit and the Pendulum
 

 

図書カード:落穴と振子

 

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