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本のない書斎/中身のない研究

「盗まれた手紙」The Purloined Letter エドガー・アラン・ポー

 

青空文庫で公開されているエドガー・アラン・ポー作品をすべて読了した。

現在公開されている作品は13あり、うち訳が違うだけのものを除けば実質は11である。

 

こちらもデュパンが登場する。「モルグ街の殺人事件」「マリー・ロジェエの怪事件」の数年後の話である。

 

ある政治的に重要な手紙が盗まれた。盗んだ者が誰かは分かっているのだが、警察がいくら探しても手紙を見つけることができない。警視総監のG氏はデュパンを頼ろうと訪ねてくる。

 

ひと月後、G氏が再びデュパンの元を訪れると、デュパンは手紙を手に入れていた。しかしそれを明らかにしたのはG氏が報酬について名言してからである。実はすでに手紙を見つけて手元に持っていた、ということも驚きだが、このタイミングで明らかにするというしたたかさにも驚かされた。

 

あるとき、ある金持の吝嗇家けちんぼが、そのアバニシーに医療上の意見をただで聞こうという工夫をしたんです。そこで、どこかで会ったとき世間話を始めて、もしもこういう患者がいたなら、というふうにして、自分の病症をその医者に話したのですな。
『その男の症候はこうこうだということにいたしますと、さて、先生、あなたならその男になにを用いろとおっしゃいますか?』とその吝嗇家がきいたんですね。
『さよう、無論、医者の助言を用いるんですな!』とアバニシーは言ったそうですよ」
「だが」と総監は少しむっとして言った。「完全に喜んで助言を用いますし、そのお礼も払いますよ。この事件でわたしを助けてくれる人があれば誰にでも五万フランをほんとうにあげるつもりなんです」
「それなら」とデュパンは引出しをあけて小切手帳を取り出しながら答えた。「それだけの額の小切手を僕に書いて下すってもいいでしょう。それに署名したら、あの手紙を渡しましょう」
 私はびっくりした。総監はまったく雷に打たれたようだった。

 

顔なじみのG氏といえど、デュパンの意見をただで聞く ことはできないようである。

 

全体としては面白い作品だと思うが、手紙の隠し場所については残念ながらあまり素敵であるとは感じられなかった。それよりはむしろ、警察がいかに屋敷のすみずみまで調べたかという描写に興味をそそられた。

 

今回も冒頭に少しだけ、「私」とデュパンの日常が描かれる。

 

 パリで、一八――年の秋のある風の吹きすさぶ晩、暗くなって間もなく、私は友人C・オーギュスト・デュパンと一緒に、郭外フォーブールサン・ジェルマンのデュノー街三十三番地四階にある彼の小さな裏向きの図書室、つまり書斎で、黙想と海泡石かいほうせきのパイプとの二重の快楽にふけっていた。

 

このあとすぐにG氏がやってくるのだが、もう少しデュパンの(G氏から見れば奇妙であるかもしれない)日常について読んでみたく思う。

 

新訳:盗まれた手紙

新訳:盗まれた手紙

 

 

図書カード:盗まれた手紙

 

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