Empty Study

本のない書斎/中身のない研究

「秘密」 谷崎 潤一郎

 

都会的な刺激に飽き飽きして、秘密の隠遁生活を楽しむ男。

男はもともと今風に言う「着物フェチ」的な嗜好があり、女装をして出かけるようになる。

 

誰も疑う者はなかった。女からの羨望の視線すら感じた。「実は男である」という秘密を持つことは、すべてを新鮮に見せた。

 

ある日男は、昔少し関係を持った女と再会する。女に指定された待ち合わせ場所へ行くと、男は目隠しをされ、車に乗せられた。それから女の家で会うようになるのだが、女は住所をかたくなに隠し、自分のことは素性のわからない「夢の中の女」と思ってくれと言う。

 

好奇心を押さえられない男は、女に懇願し、少しだけ目隠しを外してもらう。そのとき見た景色を頼りに、女の住所を突き止める。「秘密」という魅力を失うと、男は冷めてしまい、それきりその女を捨てた。

 

もっと私の心はだんだん「秘密」などと云う手ぬるい淡い快感に満足しなくなって、もッと色彩の濃い、血だらけな歓楽を求めるように傾いて行った。

 

女装の描写が、内面的な部分も含めてとても巧い。谷崎に女装趣味があったのではないかと思うほどだ。

 

秘密

秘密

 

 

図書カード:秘密

 

アクセスカウンター