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本のない書斎/中身のない研究

「破戒」島崎 藤村

 

被差別部落出身の小学校教師がその出生に苦しみ、ついに告白するまでを描く。藤村が小説に転向した最初の作品で、日本自然主義文学の先陣を切った。夏目漱石は、『破戒』を「明治の小説としては後世に伝ふべき名篇也」(森田草平宛て書簡)と評価した。

 ーWikipediaより

 

有名な作品であるが、今回初めて読んだ。

途中まで読んだところでは、丑松が先輩に素性を打ち明けてしまい、それがきっかけで社会から迫害されるようになる、という話を想像したが、違っていた。

 

「破戒」とは戒めを破ることである。父の「隠せ」という言葉。何度も何度も繰り返し言い聞かせた、穢多である丑松が生ていくための唯一の方法である。

 

丑松は素性を隠して学校の先生をしている。 穢多であるが故に、世の中を楽しむことができない。将来に夢を見ることができない。恋をすることもできない。いつも怯えて、物思いに沈んでいる。友人の銀之助は心配してくれるが、彼だって、自分の素性を知ったらどう思うか・・・

 

丑松は、穢多であることを公言している思想家を尊敬している。猪子蓮太郎氏である。父の戒めを破ってでも、こ先輩にだけは自分の素性を打ち明けたいと葛藤する。しかし打ち明けることができないまま、先生は亡くなってしまう。

 

その頃にはもう、丑松が穢多であるという噂が広まっていた。自分の手駒だけで学校を運営したく思う校長にとって、丑松を追い出す絶好の機会であった。偉大な先輩の死により、丑松はついに決心し、生徒の前で身の上を告白する。

 

もし其穢多がの教室へやつて来て、皆さんに国語や地理を教へるとしましたら、其時皆さんは奈何思ひますか、皆さんの父親おとつさんや母親おつかさんは奈何どう思ひませうか――実は、私は其卑賤いやしい穢多の一人です。

 

銀之助とお志保、そして生徒たちは、丑松の素性を知ってもなお思いを寄せてくれる。一方、校長はじめ大人たちは、生徒たちが学校を去る丑松の見送りに行くことすら許さない。

 

銀之助などが、「瀬川君のような素晴らしい人間がそのような身分であるはずがない」と思うのには、やはり差別が根付いているのだが、そこにあるのは悪意というよりもむしろ「そういうもの」としての思い込みであるというのが恐ろしい。

 

破戒 (新潮文庫)

破戒 (新潮文庫)

 

 

図書カード:破戒

 

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