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本のない書斎/中身のない研究

「わが文学修業」 織田 作之助

 

織田が小説を書き始めたのは比較的遅い。それまで小説にはあまり関心がなく、専ら戯曲に熱心だったようである。

 

大学へ行かず本郷でうろうろしていた二十六の時、スタンダールの「赤と黒」を読み、いきなり小説を書きだした。

 

わたしは同書をおそらく二十前後の頃に読んだが、面白いとか面白くないとかの前に理解ができなかった。意地だけで最後まで読み通したが、ほとんど活字を目で追っているだけだった。いつかまた手に取ってみようか。

 

八年も劇を勉強して純粋戯曲論などに凝っている間に、小説を勉強して置けばよかったと、私は未だ読みもせぬ小説家の数を数えて、何か取りかえしのつかぬ気がした。けれど、八年の劇勉強はさすがに私の小説の上に影響を及さなかったわけではない。

 

わたしの場合書くのではなく読む専門ではあるが、もっと早く読書の楽しみを知っていれば、と後悔することしきりである。

 

小説の勉強をはじめてからまだ四年くらいしか経たない。わが文学修業はこれからである。健康が許せば、西鶴が小説を書いた歳まで生きられるだろう。まだ十年ある。文学修業はそれからだと思う。私は最悪の健康状態でよく今日まで生きて来られたと思っている。文学が恐らく私の生命を救って来たのだろう。常に酷評されながら、何糞と思って書いている。それで表面はぴんぴんしている。そのうち、戯曲も書こうと思う。

 

そう、これから、これからだ。

 

いろいろ楽みで、なかなか死ねないと思う。

 

いや、まったく。

 

赤と黒〈上〉 (岩波文庫)

赤と黒〈上〉 (岩波文庫)

 

 

赤と黒 (まんがで読破)

赤と黒 (まんがで読破)

 

 

図書カード:わが文学修業

 

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