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本のない書斎/中身のない研究

「異端者の悲しみ」 谷崎 潤一郎

 

「こは予が唯一の告白書にして懺悔録なり」。谷崎潤一郎の自伝的作品はいくつか見られるが、谷崎にとってはこれが唯一のものであるらしい。

 

大文豪である谷崎にこのような時代があったのかと驚かされる。蓄音機を壊す騒動など中学生の反抗期のようだ。さして親しいわけでもない友人から見栄と遊びのための金を借り(返すあてもないのに、である)、その友人が病で死んでしまったので金を返さないで済んだ、という、今風に言うととんでもなく「クズ」なエピソードが綴られる。しかし友人たちから完全に見放されるかというとそういうわけでもなく、「金を貸さないように用心さえして居れば、面白く附き合って行ける」と谷崎の幇間的な面も描かれている。谷崎は「幇間」という短編を書いているが、谷崎自身にもそういう面があったからなのかもしれない。

 

病気の妹が亡くなり、その2ヶ月後に文壇デビューしたとなっているが、これは事実とは少し異なるらしい。とはいえ、あの耽美な小説を書いている人がこのような時代を過ごしたということは驚きでもあるし、親近感とは言わないが親しさを覚える。

 

 

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