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本のない書斎/中身のない研究

「随筆銭形平次 19 探偵小説このごろ」 江戸川 乱歩 野村胡堂

 

野村胡堂と江戸川乱歩の対談。

 

野村 わたしはね、こう思うんだ。探偵小説は盲目的本能の安全弁だと。探偵小説を読んでいる人は兇悪な犯罪はやらない。先生に毒入りウイスキーを贈って殺した東大小石川分院の蓮見。あんな犯罪は一見探偵小説をまねたようで、しかし決してあの犯人は探偵小説を読んでいないね。探偵小説は想像力を養うのに役立つよ。想像力をもっていないということは恐ろしいことで、ああすれば、こうなるということを知らない。だからどんな兇悪な犯罪でもやれる。少年犯罪の多いのも、少年たちが精神的失緊状態になっているためで、オシッコをたれ流すのとなんら違いがない。本能のおもむくままにやってしまうという状態なんだ。想像力を盛んにすれば行為の結果について考えるから犯罪予防になると思うね。


江戸川 むかしはちょっとした手のこんだ犯罪があると、犯人は探偵小説の愛読者にしてしまったりしたものだね。

 

2人は交流があるらしく、探偵小説のことから奥さんの話まで、ユーモアを混じえて軽快に話している。

 

江戸川 おたがいだんだん年をとっていくが、作品の主人公はいつまでも若いね。
 

野村 銭形平次は何年経っても三十だ。年をとらせると失敗するよ。歯の抜けたオヤジになってしまったんじゃア……。

 

野村 いつかわたしの捕物帖を訳すんだといってアメリカ人が持っていったが、とてもダメです、といってきた。英語にならんらしい。だいいち親分という言葉がない。ボスでは困るし……。ハッハッハ。

 

野村胡堂探偵小説全集

野村胡堂探偵小説全集

 

  

図書カード:随筆銭形平次

 

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