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本のない書斎/中身のない研究

「玩具/『玩具』あとがき」 太宰 治

 

私は夜、いつも全く眼をさましている。昼間、みんなの見ている前で、少し眠る。
私は誰にも知られずに狂い、やがて誰にも知られずに直っていた。

 

幼い頃の記憶。あるいは嘘。この感覚、少しわかる気がする。

 

これは未完の作品らしい。あとがきは「玩具」「魚服記」「地球圖」「猿ヶ島」「めくら草紙」「皮膚と心」「きりぎりす」「畜犬談」について。

 

「玩具」などは、散文詩とでもいふべきもののやうに思はれる。

 

「めくら草紙」は、書いてゐる時には實に悲しい氣持であつたが、いま讀むと、ユウモラスな箇所が少くない。悲痛も、度を越すと、滑稽な姿にアウフヘーベンするものらしい。

 

「畜犬談」はまるでエッセイのようだと思ったが、これを読む限り創作なのであろう。

 

甲府では私は本當に野良犬どもに惱まされた。はじめは大まじめで、この鬱憤を晴らすつもりで取りかかつたのだが、書いてゐるうちに、滑稽になつてしまつた。憤慨もまた度を越すと、滑稽に止揚するものらしい。書き終へて讀みかへしてみたら、まるでもう滑稽物語になつてしまつてゐたので、これは當時のユウモア小説の俊才、伊馬鵜平君に捧げる事にしたのである。

 

太宰治集 哀蚊―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

太宰治集 哀蚊―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)

 

 

図書カード:玩具

図書カード:『玩具』あとがき

 

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