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本のない書斎/中身のない研究

「木枯の酒倉から」 坂口 安吾

 

安吾の処女作。であるのだが、これまでに読んだ作品の中ではもっとも難解であった。もっとも、分かりやすさというのはその作品の良し悪しを決める決定打にはならないし、わたしの理解が不足しているという点は否めない。

 

主人公が狂人のような不思議な男と出会い、その男が語りだすという話なのだが、誰が話しているのががわかりにくい。あえてそうしているのかもしれない。なぜかラテンアメリカ文学のような感じを受ける。

 

荒唐無稽さは同じく初期の作品である「風博士」を思わせるが、作者の投影を感じさせるのはこちらの作品の方である。主人公の男の引っ越しや、狂人が酒の味を愉快には感じていないことなど、安吾自身との類似が見られるのだ。

 

独特のカナ表記やリズムはこの時点ですでに健在。インドやら仏教やらヨガやらの単語が散りばめられているのも独特の世界観を作り出している。

 

この小説は筋もなく人物も所も模糊として、ただ永遠に続くべきものの一節であります。僕の身体が悲鳴をあげて酒樽にしがみつくやうに、僕の手が悲鳴をあげて原稿紙を鷲づかみとする折に、僕の生涯のところどころに於てこの小説は続けらるべきものと御承知下さい。僕は悲鳴をあげたくはないのです。しかし精根ここにつきて余儀なければしやあしやあとして悲鳴を唄ふ曲芸も演じます。(作者白)

 

木枯の酒倉から・風博士 (講談社文芸文庫)

木枯の酒倉から・風博士 (講談社文芸文庫)

 

 

図書カード:木枯の酒倉から

 

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