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本のない書斎/中身のない研究

「明治開化 安吾捕物 その四 ああ無情」 坂口 安吾

 

この作品は、アニメ「un-go」の第二話のモチーフとなっている。

 

とはいえストーリーはほぼ別物と言ってよく、「un-go」では戦意高揚のため政治的に作られたアイドルの話になっていた。このアイドルグループの名前が「ヨナガヒメ」であるのがいかにもオマージュ作品らしくて良い。

 

アニメの方は舞台が現代(近未来?)になっているので仕方ないが、タクシーやスーツケースと、車夫や行李とではやはり雰囲気が違う。「行李に入った死体を車夫が預かる」方が生々しさがある。

 

花廼屋因果はどうやら「犯人を取り押さえる」役割のようだが、お梨江は相変わらず名前がチラと出るだけで、特にどうということもない役割のようである。

 

それにしても、虎之介は剣客のはずだが、その手の見せ場は一切なく、ただひたすらに与太郎である。そして虎之介のせいにする海舟も海舟である。出番こそ少ないが、この作品の魅力における2人の役割は大きい。

 

 海舟は虎之介の語る真犯人をきき終り、沈黙しばし、自若たる面色で、静かに言った。
「ヤスが犯人とは意外な真相だよ。虎の話からじゃア、ヤスがハカリゴトを用いて暗愚を装っていたというカラクリは見破ることができない。すべて探偵ということは、実地にこの目で見なくちゃア真相を見破りがたいものだ。ヤスが愚を装っているというカラクリの如きものは、目のある者には見破りうるが、虎の如くにフシ穴の目には、所詮知りうべからざることだ。フシ穴を通して捉えたことを土台にして、この方に事の真相を見破れと云うのはムリなことさ。新十郎といえども、虎の目玉を土台にしては、真犯人を捉えることは不可能事だよ。彼の目によって見る故に、よく真相を見ることができるのさ。しかし、新十郎はよく出来た奴さ。完璧なるが故に弱点もあるとはよく言い得ている。虎の如きは不完全の故に弱点だらけだが、完璧なるものといえども敢て怖るるには当らないということは、兵法、経済等のことに於ても真相だよ」
 虎之介は己れのフシ穴の眼によって非凡なる英傑の目を狂わしめたことを甚しくじ嘆き、長く長くうちうなだれて、一言の言うべき言葉も失っているのみであった。

 

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図書カード:明治開化 安吾捕物

 

 

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