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本のない書斎の書評ブログ

現代のディストピア小説【ボラード病】ネタバレ感想

 

密かにはびこるファシズム、打ち砕かれるヒューマニズム。批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。

 

この本は内容を知ってしまってから読んだのだが、できれば何も知らずに読みたかった。

 

「どんでん返しがある」「何かが隠されている」などと言われるとどうしても伏線を探りながら読んでしまうので、ネタバレの内容はもちろん「ネタバレするようなことがある」こと自体できれば知りたくない情報ではある。

 

とはいえ、本当に何も知らなかったらたぶん手に取っていないだろう。「内容を語らず魅力を伝える」ということは難しい。

 

感想

 

3.11以降の福島の原発事故を想起せずにはいられない内容。もちろん全く同じではないし、フィクションなのだが、これが「問題作」と言われる所以だ。

 

どこかおかしい架空の町、海塚。

 

一応、最後まで読むと、この物語すべてが主人公の「手記」であり、特に後半は主人公が事実を捻じ曲げて書いていたことがわかる。これはネタバレといえばネタバレだが、そこはあまり重要ではない。それよりも、「この作品が何を示唆しているのか」ということに触れるのがネタバレである。原発というモチーフは、ある瞬間にわかる、というより、だんだん見えてくる。震災後の「絆」というフレーズを思わせる言葉に背筋が寒くなる。

 

これはSFではない。過去でも未来でもない、あえて言うならパラレル的な、今この瞬間のリアルなディストピア。リアルすぎる肌感覚に、どこかで本当に起きているのではないかと思ってしまう。 

 

戦慄を覚える現代のディストピア小説。

 

デビュー以来、奇想天外な発想と破壊的なモチーフを用いて、人間の根源的な悪をえぐるように書いてきた吉村萬壱が満を持して放つ長篇。
B県海塚という町に住んでいる小学五年生の恭子。母親と二人で古い平屋に暮らすが、母親は神経質で隣近所の目を異常に気にする。学校では担任に、市に対する忠誠や市民の結束について徹底的にたたきこまれる。ある日亡くなった級友の通夜で、海塚市がかつて災害に見舞われた土地であると語られる――。
「文學界」に掲載後、各紙誌で絶賛され、批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。

 

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