Empty Study

本のない書斎/中身のない研究

文庫X【殺人犯はそこにいる】―真犯人「ルパン」と、今なお隠蔽され続ける不都合な真実

これは小説ではない。なんというジャンルになるだろうか、ドキュメンタリー、ノンフィクション、ルポ、暴露本・・・しかし内容は程度の低いゴシップなどではない。 凶悪な「連続幼女誘拐殺人事件」の犯人は実は冤罪で、真犯人は別にいる。そして警察は、真犯…

犯人の“人格”は誰?【人格転移の殺人】ネタバレ感想

人格が入れ替わるというSFのような設定だが、決められたルールは厳密に守られ、例外や反則はないので気持ちよく騙されることができる。「人格転移システム」の存在や、CIAのような組織が暗躍することも、舞台がアメリカなのであまり違和感がない。また、様々…

サマンタシュウェブリン【口のなかの小鳥たち】感想

本棚から本を取り出して読むというより、ギャラリーを歩くかインディペンデント映画を見るようなつもりで読め——マリオ・ベジャティン アルゼンチンの作家、サマンタシュウェブリンによる15篇の短い物語。 Amazonにもレビューがなく、「サマンタシュウェブリ…

緻密な設定の妙【七回死んだ男】ネタバレ感想

主人公の大庭久太郎は、自分の意図と関係なく、時間の「反復落とし穴」に入るとの設定である。(解説より) 「バタフライ・エフェクト」、「時をかける少女」、「アバウト・タイム」など、「過去に戻って変更を加えることができる」設定のストーリーは多々あ…

10歳の自己啓発本「見てる、知ってる、考えてる」と「自分らしさ」について

10歳の著者が書いたという自己啓発本を読んだ。 いい意味で子供らしい表現などもあって、そういう部分はとても良かった。ただ、抽象的な話題になると、どうしても「借り物感」を感じてしまう。どこかで聞いたような言葉たち。彼の背景を知らなければ、そこま…

スポ根×音楽×ミステリー【さよならドビュッシー】ネタバレ感想

「カエル男」の解説を読んで気になったのでこちらも読むことに。たしかに甲乙つけがたい。しかし最後にはこちらが選ばれたというのは納得です。カエル男のプロットもすごいですが、ドビュッシーの方が人物が魅力的に書かれていると感じました。 【連続殺人鬼…

社会派サイコサスペンス【連続殺人鬼 カエル男】ネタバレ感想

タイトルからはB級映画のような印象を受けるが、これがなかなか本格派。最初は「連続殺人鬼 カエル男」ではなく「災厄の季節」というタイトルだったそう。 著者は映画化もされた「さよならドビュッシー」の中山 七里。 【さよならドビュッシー】 - Empty Stu…

【社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった】講演感想

「社会人として大切なことはみんなディズニーランドで教わった」の著者・香取貴信さんの講演を聞く機会があった。香取さんはディズニーランドで8年間アルバイトをしていた方だ。 講演の感想 印象的だったのは以下の部分。 ・なぜ雨の中ベンチを拭くのか? …

筒井康隆のミステリー【ロートレック荘事件】ネタバレ感想

期待が大きすぎたか。仕掛けが分かってしまった。でもこのラストは良い。 感想 ある程度この手のトリックに慣れていれば、すぐに気が付くだろう。「工藤忠明」「木内典子」など、登場人物は皆フルネームで語られるが、「濱口」と「重樹」は絶対に 「濱口重樹…

透明な水槽のなかの生き物【コンビニ人間】感想

芥川賞受賞作。考えさせられる部分が多くありつつも、読みやすく、純粋に娯楽として楽しめる一冊。 あらすじと感想 主人公は、同じコンビニで18年間アルバイトをしている36歳独身女性。こう書くと人生に焦りを感じているアラフォー女子の話かと思われるのだ…

まるでドグラ・マグラ【向日葵の咲かない夏】ネタバレ感想

道尾作品は「片眼の猿」「カラスの親指」に続いて3冊目。 【片眼の猿】感想 - Empty Study 道尾秀介の叙述トリック作品は複数ありますが、一番有名なのはやはりこの作品ではないでしょうか。評価が分かれていますが、その理由にも納得。叙述トリックの中で…

【砕け散るところを見せてあげる】の叙述トリックを詳しく解説します

作品紹介 解説(ネタバレあり) 「玻璃」と「俺」の会話(P5~6) 「父さん」と「母さん」と「俺」の話(P7~20) 「清澄」と「玻璃」の話(P21~300) ミスリード 年代の描写 清澄のお父さん あの子は死んだ ここからは誰の話? (P301~309) 再び「俺」の…

語り手は嘘を吐かない【星降り山荘の殺人】ネタバレ感想

なるほどこれは上手い。 たった一言で覆すのではなく、「たった一言でミスリードする」作品です。 感想 閉ざされた山荘での連続殺人、これ以上ないベタな設定。加えて登場人物のキャラが濃い。特徴としては、全てを知っている存在の語り手がときおり登場し、…

エンターテイメント映画を見たような【マリオネットの罠】ネタバレ感想

久しぶりで懐かしささえ覚える赤川次郎。小学生の頃に幽霊シリーズや三毛猫ホームズシリーズなどを読んでいたが、内容はろくに覚えていない。というか、ちゃんと理解して読んでいたのかさえあやしいものである。 赤川次郎といえば軽いタッチでコミカルなイメ…

隠すことで際立つメッセージ【片眼の猿】ネタバレ感想

ハードボイルドな世界観の私立探偵もの。文体はかなり軽く、ライトな娯楽作品。いちばん最初に読んだ叙述トリック作品はおそらくこれだと思う。そうとは知らずに読んだが、あとになって言われてみればたしかに叙述トリックだった。 ※以下、「at Home」と「葉…

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